試験官は合格させにやってくる!

以下の3項目は補足です。

風の影響
セスナ機のような軽量・低速な小型機は風の影響をまともに受けます。
上昇気流や下降気流に出会うと高度が勝手に変動しますし、横からの風も方向や強さが常に変わるため、操縦桿をしっかり保持していただけでは、機首は勝手な方向を向いてしまいます。
初めのうち風のあるときは、同一高度で直線飛行しようとしても、なかなか思い通りにいかないものです。
空中操作練習でも、思い通りには機体は動いてくれません。これにはかなりの練習がいります。

余談ですが、空中操作練習の場合は、操縦桿は左手一本で持ち、右手は常にスロットルにおいて出力の調整をします。完全な片手ハンドルの状態です。
また、操縦中に地図などを見るときも、左手は必ず操縦桿を握っていて、常に操作は右手一本で行います。実地試験のときに、両手を離して何らかの操作をすると不合格の原因の一つになります。

見張り義務
操縦中の操縦士には機外の見張りが義務づけられています。また、計器類は常に監視していなくてはなりません。エンジンの不具合なども、最初にオイルの温度上昇、オイル圧力の変化等で計器に現れてきます。これを見逃すととんでもないことになります。

このため、操縦士は機外の監視と計器類のチェックを交互に行わなければなりません。飛行機の設計も重要な計器類を操縦士の正面に置き、短時間でチェックができるようにしています。

航法審査時の受験者の操作内容
航法審査の時は、次のような操作を連続的に行うため、受験者はかなり忙しい状態になります。
 ・機外の監視
 ・計器類の監視
 ・計画飛行高度の維持
 ・経由地の通過時刻と、次の目的地の到達予想時刻の記入と試験官への報告(フライトプラン)
 ・地形と地図の照合
 ・管制機関への位置報告
 ・地方空港やグライダー飛行場の近くを通過する場合は、飛行場とのコンタクト。(安全確認)。
 ・針路に雲がある場合は、それを避けて飛行したあと、飛行機を計画した飛行経路に戻す作業。
 ・高度、針路を変更する場合は、その都度試験官への報告。
 ・試験官からの、経由地の変更指示の対応。
 ・帰投する空港の、天候の事前確認。
 ・帰投する空港の管制官とのコンタクト、着陸許可の取得、着陸準備。

若葉マーク
口頭試問に始まり空中操作、航法と多種多様な科目を1日でこなしていくわけですが、技量が劣悪なのは試験官も承知しています。自動車の免許取得の時のことを考えても判るように、若葉マークをつけてチョロチョロ走っていても、暫くすると混雑した街のなかでもスイスイ走れるように技量が上達していきます。
そうです!操縦の腕も免許を取得したあとで、どんどん向上していくのです。

合否判定について
とても、手足のように使いこなしてるとは云えない飛行機で、試験官が同乗しているというプレッシャーを受けている受験生に、完璧な操作を期待するのはどだい無理な話です。
小生もこの「札幌フライングクラブ」の前身である「AFJフライングクラブ」で操縦士免許を取得しましたが、ミスの連続で酷い状態でした。

試験官の講評のとき、次々と指摘されるミスに「ああ、今回の試験は不合格だな!」と観念して聞いていました。室外で聞いていた人もそう思ったそうです。試験官は、試験の最中は目を閉じて眠っているように感じていたのですが、やはりすごい。観るべき所はちゃんと観ている!!

それでも、最後に「自家用操縦士のレベルには達しているので合格とする」と云われたときは、逆にびっくりしました。
これは私見ですが、受験時の技量は劣悪でしょうし、飛行機は「ドカン」と着陸させるし、ミスは連発するしで、普通の神経の持ち主では試験官はなかなか務まらないのではないでしょうか。

ミスを集計するのではなくて、口頭試問・実技審査をとおして、受験者の沈着性、操作の安定性・安全性、飛行機に対する取り組み等を総合的に判断しているのではないでしょうか。
それでも試験に失敗したなら、あなたが大きなミスを犯したか、その操縦ぶりが試験官を不安にさせたのかもしれません。